はじめに
このところ、VBP・NRDL・公的医療保険制度・海南省楽城医療特区に関する記事ばかりを取り上げ、内容に偏りがあったように感じる。
本日は久しぶりに話題を変えて、久々にDRGsを取り上げたい。とは言っても特段新しい内容ではなく、DRGsを振り返る教科書的な内容であること、ご了承いただきたい。
DRGsとは?
DRGs(DiagnosisRelated Groups)とは、患者の年齢・疾病診断・合併症・併発症・治療方式・症状の程度等に基づいて、患者をいくつかの診断区分に分けて診療費/治療費、及び病院への診療報酬の管理を行うシステムを指す。
DRG区分には以下の考え方が採用されている。
・疾病種類が異なれば、診断区分で分けられる。
・同一の疾病でも、治療方式が異なれば処置区分で分けられる。(手術か否か等)
・疾病・治療方式が同一であっても、個体の特徴が異なる場合は、年齢・併発症および合併症・出生体重等の要素区分で分けられる。
またDRGの対象外としては以下が挙げられる。
・外来診察
・リハビリテーション
・長期入院が必要な病例
・診断、治療方式は同じだが、資源消費や治療の結果が著しく異なる可能性がある病例(精神疾病など)
DRGs 過去の経緯
【2017年】
国務院より《基本医療保険支払方式改革の更なる強化に関する指導意見書》が出される。全国規模でのパイロット試行を行う旨が発表された。
【2019年6月】
国家医療保障局などの4部門から、DRGs国家パイロット地区が発表された。
(30の地区、主に二級以上の医院)
北京市、天津市、邯鄲市、临汾市、鳥海市、瀋陽市、吉林市、ハルピン市、上海市、無錫市、金華市、合肥市、南平市、上饶市、青島市、安陽市、武漢市、湘潭市、佛山市、梧州市、儋州市、重慶市、攀枝花市、六盘水市、昆明市、西安市、庆阳市、西宁市、ウルムチ市、ウルムチ市(部隊直属・十一師・十二師)
【2020年6月】
国家医療保障局から《医療保障疾患関連群(CHS-DRG)細分化方案(1.0版)に関する通知》が発表された。CHS-DRG細分化グループは、《国家医療保障DRG(CHS-DRG)区分方案》の376分類を更に細分化したものであり、DRG支払のベースとなる。
DRGs 今後の予定
【2020年12月】
パイロット実施結果を評価。今後の計画を作成
【2021年1~5月】
省市間での経験交流会を実施
【2021年9月】
パイロット特定項目への評価を実施。最終意見書及び今後の計画を提出
【2021年12月】
パイロットの状況及び今後の計画を国務院へ報告
さいごに
国家医療保障局のホームページに掲載されている《2019年医療保障事業発展統計年報》のデータを基に、以下を算出してみた。
【都市従業員基本医療保険制度(約3.3億人)】
・1人あたりの平均保険料(掛金):4,523元
・1人あたりの平均保険償還額:3,591元
【居民基本医療保険制度(約10.2億人)】
・1人あたりの平均保険料(掛金):824元
・1人あたりの平均保険償還額:793元
2019年を見ると、医療保険財源はプラスで残っている状況だ。
医療費財源を効果的に活用するために、DRGs導入、公的医療保険制度の見直しなど、様々な施策が国家医療保障局主導で打ち出されている。
VBPやNRDLルール改定といった薬価見直し政策についても、元をたどってみると、同じ医療保険財源へ行きつく。
DRGsや公的医療保険制度が落ち着かないと、薬価抑制策の変化・見直しも絶えず行われるような気もしてしまうが、引続き様々な視座から中国医療環境を見ていきたい。
以上
この記事は各種公開情報・ibg経験等を基に、ibgが内容を作成したものです。