はじめに
2021年11月26日、国家医療保障局より《DRG/DIP支払方式改革 3か年アクションプランの通知》が発表された。
これまでパイロット試行されてきたDRG/DIP支払方式をより一層改善し、2025年までに全国統一の規範化された算出・支払方法を構築しようというものだ。
以下2つの目的を達成すべく、2009年から様々な政策が打ち出されてきた。
【目的】
・公的医療保険基金の医療機関に対する合理的な分配を如何に実現するか?
・医療機関の医療費を如何に削減するか?
議論が開始された2009年当初は、「項目別支払(医療行為1つ1つに対する算出。CT検査に何元、XXX薬による治療に何元など)」などの方法も提示されていたが、今では「疾病別の算出/支払方式」がベースとなった議論・パイロット試行が行われている。
それでは以下より、DRG/DIPに関する内容を振り返りたい。
DRG/DIP 基本情報
DRG・DIP共に、目的は先述した以下の2つと言える。
【目的】
・公的医療保険基金の医療機関に対する合理的な分配を如何に実現するか?
・医療機関の医療費を如何に削減するか?
先にパイロット試行したのはDRG(Diagnosis-relatedGroup)の方だ。
専門家達の経験を基に、「疾病種類(診断結果による)」を基にして疾病グループを設定する。更に、「治療方法(手術か否か)」及び「患者特徴(年齢/体重等)」等の要素に対する補正を設定する。
それらの要素の組み合わせにより、患者別の診療報酬を算出するというのが、DRGの概要である。
パイロット都市では、事前に医療機関から上記ロジックに基づく翌年度の診療報酬を収集し、「先払制」として公的医療保険基金が医療機関に支払われていた。
医療機関側にとっては、当然ながら翌年度の患者情報(疾病種類・治療方法・患者特徴)を事前に予測することは困難な状況で、医療保障局に対して多めに事前申請(=予算申請)する状態であった。
上記DRGの問題点(如何にして公的医療保険基金を合理的に分配するか)を解決すべく、開始されたのがDIP(BigData Diagnosis-intervention Packet)だ。
DIPの場合、対象とする医療機関と医療保障局の間で、電子カルテなどのデータ連携が実現されていることが前提となる。
その前提をクリアした医療機関が対象となるため、DRGが「専門家の経験ベースによる基準額の算出」だったのに対し、DIPは「RealWorld Dataによる基準額の算出」となっている。
またRWDを収集した上で基準額を算出するため、医療機関に対する支払いも「後払制」となっているものだ。
DIPはDRGと異なり、「患者特徴(年齢/体重等)」を考慮せずに基準額が算出される。医療機関としては、同じ疾患ならば高齢者であっても若年者であっても診療報酬は同額であるため、回復が比較的早い(≒入院日数などが短く回転率の高い)若年患者を選ぶ傾向になりやすい。この患者選別が、DIPの問題点として挙げられる。
ちなみにDIPでは、同一の疾病・治療方法でも、三・二・一級医院それぞれで異なる点数が設定されている。重症の場合は三級の方が点数高く、軽症/慢性病の場合は一級の方が点数高いという内容だ。このような設定をすることで、いわゆる“分級診療”を実現しようとしている。
DRG これまでの取り組み
参考として、DRG(Diagnosis-relatedGroup)に関するここ3年間くらいの取り組みをまとめた。
2021年12月現在、上記3つのステップは既に完了している。
2021年12月17日に医療保障局から《DRG/DIP支払模範都市リストの通知》が発表された通り、今後は以下の都市で改善作業が行われる予定だ。
【DRG模範都市:18】
北京市、河北省邯郸市、山西省临汾市、辽宁省沈阳市、黑龙江省哈尔滨市、江苏省无锡市、浙江省金华市、山东省青岛市、河南省安阳市、湖北省武汉市、湖南省湘潭市、广西壮族自治区梧州市、四川省攀枝花市、贵州省六盘水市、云南省昆明市、甘肃省庆阳市、青海省西宁市、新疆维吾尔自治区乌鲁木齐市,新疆生产建设兵团直属统筹区
【DIP模範都市:12】
河北省邢台市、吉林省辽源市、江苏省淮安市、安徽省宿州市、福建省厦门市、江西省赣州市、山东省东营市、湖北省宜昌市、湖南省邵阳市、广东省广州市、四川省泸州市、贵州省遵义市
【DRG/DIP模範都市:2】
天津市、上海市
DGR/DIP 支払方式改革 3か年プラン
《DGR/DIP支払方式改革 3か年アクションプランの通知》だが、医療保障局などの発表だと「4×4 任務設定」というフレームワークで説明されている。
上記スライドは、それら半分の内容(2×4)をスライド1枚ものに整理したものだ。
【実施範囲の拡大】
・地域・医療機関・疾患・医療保険基金という4つの視点から、DRG/DIP適用範囲を拡大していく計画
・カバー範囲の数値目標は、2022年→2023年→2024年毎に設定(省市の場合、40%→70%→100%とカバーする目標)
【運用体制の完備】
・ポイントは“動態調整”。何を調整するかというと、「算出/支払基準額の計算方法」で設定されているパラメータ値などである。つまり、これまでのDRG/DIPパイロットで作成された「計算方法(=公式)」の中のパラメータ値が、各地域でその都度適切な値が設定されるような体制を準備するということだ。
・上記のような動態調整が求められているため、DRG/DIPの運用にも正確性と効率性が求められる。そのためのSOP構築なども計画されている。
・またダブルチャネル政策といった現行政策との併用も促している。医療機関としては高額医薬品を使うと医療費がDRG/DIP基準額を超えてしまう可能性があるため、高額医薬品を避ける恐れがある。医療保障局としては、NRDL収載された医薬品が適切に使用されることを促したく、DRG/DIPと既存政策との併用運用がどうなるかも、今後注視していきたい点だ。
さいごに
DRG/DIPに関する今後3か年のアクションプランが今回発表された。
実際には1年毎に進捗状況を見ながら、目的達成に向けたプランの調整が今後も繰り返されると予想される。
以上
この記事は各種公開情報・ibg経験等を基に、ibgが内容を作成したものです。