はじめに
今回も中国の公的医療保険に関する話題を取り上げたい。
「都市従業員基本医療保険」へ加入する上海市の男性が、定年退職後に他の地方へ移住する場合、医療面での心配事が多い。心配事として挙がるのは、「上海の医療保険へ加入する彼は、上海以外の医療機関では保険適用できない」という点だ。
こういった省市跨ぎの医療保険適用問題だが、既に解決に向けた取り組みが行われてきている。
先程の上海市の男性の例を使おう。彼が上海市以外の医保定点病院で急診或いは入院した場合、その領収書を6か月以内に上海市の医療保険センターで精算すれば保険適用されるというルールが、2019年5月から始まった。もちろん適用可能な地域は限定されており、杭州市・南通市・常州市・洛陽市といったいくつかの都市のみとなっている。
簡単だが、省市跨ぎの保険適用に関する取り組みについて紹介したい。
増加する対象医療機関・使用患者数
先ずは入院に関する状況を紹介しよう。
入院費用を省市跨ぎで精算可能な指定医療機関だが、2020年7月末時点で35,008軒となり、2020年6月末に比べると3,335軒増加した。また使用した累計患者数はのべ562万人となった。
外来費用については、3つの地区でパイロット試行が行われている。
・京津冀:北京市・天津市・河北省一部
・長三角:上海市・江蘇省一部・浙江省一部・安徽省一部
・西南五省区:重慶市・四川省一部・貴州省一部・雲南省一部・チベット自治区一部
上記3つのパイロット地区だが、外来費用を省市跨ぎで精算した累計患者数は、のべ155.5万人となった。
国務院提供アプリより
こちら、国務院のWe-chat配信ニュースで掲載されていた、省市跨ぎの医療保険精算に関するアプリの紹介記事だ。
アプリ内の手続きだが、以下になっている。
1.アプリ内で個人情報を事前登録
2. 登録内容に対する国家審査
3. 審査通過後、アプリ内で治療を受けたい医療機関を選択
4. 医療機関で治療を受けた後、持参する医療保険カードで手続き
外来については上記で紹介した3つのパイロット地区に限定されているが、国として省市間の移動を、医療保険の面から支援しようとする取り組みの1つだ。
さいごに
ここ2回の本ibgHealthcare Newsでは、医薬品だけでなく治療費なども含めた公的医療保険制度に関して紹介してきた。
本News・文章だけだと誤解を与えることがあるかも知れない。不明点等ありましたら、ibg西岡まで問い合わせください。
以上
この記事は各種公開情報・ibg経験等を基に、ibgが内容を作成したものです。