はじめに
2020年12月17日、“海南自由貿易港 特医・特薬越境医療保険Project”の発表会が行われた。
中国銀行保険監督管理委員会-海南監督管理局によるリードの下、海南省委深化改革オフィス・海南省衛生健康委員会・楽城先行区管理局・海南省医療保障局などが参画しながら進められてきた当Project。Projectチームが主体となって作られた保険商品が、今回発表された。
いくつかの保険商品が発表されたが、先ずは全体的な特徴を紹介したい。
【“特医”保障に関して】
・楽城医療先行区にある4つの病院で特定疾病の治療を受ける場合、その医療費を保険保障対象とすることが可能。
・香港の医師による診断・治療を可とする。
・必要に応じて保険加入の患者さんが香港で治療を受けた場合も、保険保障対象とすることが可能。
【“特薬”保障に関して】
・中国での未上市医薬品51品目と上市済み医薬品21品目を対象に、最大100万元の保障が提供される。
・これにより、イノベーティブな新薬を必要な患者さんへ提供する手段の1つとする。
以下に、今回発表されたいくつかの保険商品を紹介したい。
保険商品の概要(一部紹介)
【名称“楽城特薬保険(海南島民版)”】
・金額:保険料29元/年、最大保険金100万元
・加入資格:海南省在住の身分資格を持つ方(年齢制限なし、加入時の健康証明不要)
・カバー範囲:70品目の抗癌剤(中国で未上市の抗癌剤を含む)
・現状:既に本商品の販売を終了。2020年9月末日までに752,472人が加入(うち、個人加入は380,695人、団体加入は371,777人)
(個人的な感想)
上記だが、集まった保険料は約2,200万元(29元×752,472人)。
保険商品の設計方法を私が詳しく知っている訳ではないが、単純計算すると22人の患者さんしか保障することができず、第三者ながら心配してしまう。
実際の保険金支払い状況などについても、引続きウォッチしていきたい。
【名称“楽城特薬保険(全国版)”】
本保険商品はまだ販売されている。上記画面は、We-chat上の楽城先行区サイトからアクセスしたものだ。
・金額:保険料39元/年、最大保険金100万元
・加入資格:中国に居住するの方(年齢・国籍制限なし、加入時の健康証明不要)
・カバー範囲:中国で未上市の医薬品49品目、中国で上市済みだが該当適応症が承認されていない全球特定抗癌剤
保険加入後、がん治療の必要性が生じて保険保障を受けたい場合の申請ステップは以下の通り。
1.加入者が申請
2.指定医療機関での診断、及び対象医薬品の輸入申請開始(加入者へは、指定医療機関の予約サービスと遺伝子検査サービスが初回のみ無料提供)
3.診断結果が承認され、また対象医薬品を輸入できた場合、指定医療機関での治療を実施。
またこの保険商品には、海南楽城までのフライト費用が1回のみ(5,000元以内)付与されている。
(個人的な感想)
うがった見方をすると、未承認の医薬品に対する被験者を募集する仕組みのように見えてしまう。もちろん、患者さんをはじめとするステークホルダー間でWIN-WINの関係になることが望ましい。
目的は何か?
上記は、2020年6月に海南省政府から発表された《海南自由貿易港 博鳌楽城国際医療観光先行区条例》を纏めたスライドだ。
今回紹介した保険商品の発表だが、私が何より面白いと感じたのは、金融監督機関・医療衛生監督機関・発展改革検討機関が連携して作ったものという点だ。
(中国銀行保険監督管理委員会-海南監督管理局、海南省衛生健康委員会、海南省医療保障局、海南省委深化改革オフィス、楽城先行区管理局等)
上記スライド内にある目的を達成すべく、関連機関・関連業界が横連携しながら、医療・経済発展に繋がる仕組みを作り出そうとしている。
楽城国際医療観光先行区は、以下のVisionを掲げている。
・2025年までに、保有する医療技術/設備・医薬品をグローバル先進レベルのものとする。
・2030年までに、世界的な一流医療観光地となり、また医療科学技術イノベーションプラットフォームとなる。
Vision実現へ向けて道半ばではあるが、引続き注視していきたい。
以上
この記事は各種公開情報・ibg経験等を基に、ibgが内容を作成したものです。