はじめに
2021年6月11日、国家衛生健康員会・国家発展改革委員会・工業情報化部・国家医療保障局など13機関からの共同通知として、《健康面における貧困農村地域の振興・発展に向けた実施意見通知》が発表された。
5章・21条から構成された読み応えある内容だったので、皆さんへ共有させていただきたい。
「農村戸籍住民の方々に対して、よりよい医療サービスを今後どのように届けていくか?」を考える際の参考になれば幸いです。
(以下、公的医療制度概要スライド)
本文より一部抜粋
※全21条の内容から抜粋したものを長々と記載しています。流し読み程度でご覧ください。
【1.全体要求】
(第1条:考え方)
・今後5年以内に貧困地域の衛生環境を改善し、県域の医療制度改革を深化させることで、農村地域における健康管理レベル・医療保障レベルを向上させる。
(第2条:主要目標)
・2025年までに農村低収入者の基本医療保障レベルを大幅に向上。
・貧困地域における医療衛生サービス体系の改善。
・設備面、サービス面での改善。
・重大疾病のコントロール強化。
【2.政策の推進、基本医療構築による成果の保障】
(第3条:疾病分類措置の改善)
・30種の疾病について、貧困農村地域においても患者に対して規範化された治療が行われるよう徹底。
・家庭医師(かかりつけ医)の契約対象者数の拡大。高血圧・糖尿病・結核病・重度精神障害等の慢性病患者に対する体系的な健康サービスの提供。
(第4条:入院患者に対する後払い政策)
・効果的なリスク管理を行う前提の下、農村貧困者等に対して入院治療費のデポジットを求めない。医療保障局と定点医療機関の情報連携を強化し、医療保障における“一駅式”の支払いを推進する。
(第5条:疾病状況の把握と扶助体系の整備)
・民生部、医療保障局といった政府機関間の情報連携を強化し、また基層医療衛生服務機構も活かしながら、貧困地域における疾病状況を把握し、またそれを扶助する仕組みを構築する。
(第6条:農村低収入者への健康支援体系の構築)
・機能障害となった高齢者の支援、3歳以下の幼児育成、青少年の近視・肥満などへの健康予防対策。
(第7条:農村医療衛生サービス範囲の拡大)
・農村での医療状況を的確に把握しながら、適切な地域に医療施設を設置したり、医療従事者を配置する。
【3.貧困地域の衛生健康サービスレベルの向上】
(第8条:県域での医療制度改革の更なる推進)
・緊密型の県域医療共同体の建設を推進。映像/心電/病理診断/医学検査といったセンター資源を共有し、地域における検査サービスの提供(基礎検査~ハイレベル診断)を実現させる。
・緊密型の医療連合体内における、医療保険基金の共通管理を推進。
・家庭医師(かかりつけ医)のサービス費用・内容をより明確にし、それがより浸透するよう推進する。
(第9条:医療衛生サービス体系の向上)
・貧困地域への医療衛生機関の建設を促進。
(第10条:公共衛生サービス体系の公平化)
・貧困地域に対する、予防管理サービス体系・医療設備設置の強化。
(第11条:基層医療衛生の人材強化)
・医学部生の学費無償化。卒業後は中部・西部地域の郷鎮衛生院で一定期間勤務。
・各種、農村医師の給与面・年金面での待遇改善。
(第12条:三級医院による継続サポート)
・三級医院は“組団式”サポート方式を継続しながら、県級医院へ管理人員・学科リーダーを少なくとも5人を毎回6か月間以上派遣させる。
(第13条:“オンライン+医療健康”の発展を推進)
・上位レベルの医院が貧困地域の県級医院に対して、リモートによる医療レベル向上支援を実施。またオンライン診療を郷鎮衛生院や村衛生室まで推進するよう尽力する。
・“オンライン+”の考え方の下、公共衛生サービス・かかりつけ医師サービス・患者教育サービス等を効率的に推進させる。
【4.健康中国プランの推進、貧困地域の医療管理体制向上】
(第14条:重点地域における重大疾病の予防管理強化)
・貧困地域における伝染病観測・報告・分析体制の改善。
・エイズ等の重大伝染病の流行を効果的に抑える。
・結核病の予防管理に向けた、“服薬+栄養食事”といった規範化管理政策の改善。
(第15条:重点人群への健康改善活動)
・農村部の婦人層に対する子宮頸がん・乳腺がん等に関する検査プロジェクトの実施。
・農村地域における生育政策、児童栄養改善、新生児疾病検査などの実施。
(第16条:全面的な健康促進プランの推進)
・貧困地域における健康知識の普及、合理的な食生活、運動、喫煙管理、心理・環境面での健康促進。
(第17条:愛国衛生運動の展開)
・農村地域の環境整備。ゴミ・汚水・トイレなどの基礎衛生環境の整備。
【5.実行組織】
(第18条:リーダーシップの強化)
・中央政府による全体管理、省政府による責任、市/県/郷といった地方政府による業務の実行。
(第19条:部門間連携の強化)
・各部門の職責を明確にした上で、政策・業務面での連携を図る。(衛生健康部門、発展改革部門、財政部門、民生部門、医療保険部門など)
(第20条:重点サポートの強化)
・貧困地域に対する現行の各種政策投資を継続させつつ、西部地域の郷村地域に対する重点的なサポートを実施。
(第21条:宣伝活動の強化)
・政策の読解・研修・宣伝活動の強化。
さいごに
個人的には、(第13条:“オンライン+医療健康”の発展を推進)に興味を持っている。オンライン診療といった単純な話だけでなく、かかりつけ医サービス、地域内の住民健康情報管理(予防~治療~予後・介護まで)といったデジタル技術を使ったサービスが、官民に関わらず今後出現すると考えられる。
中国は国民皆保険をほぼ実現したとはいえ、農村戸籍住民に対する公的医療保障体制は薄い。彼らに対する衛生健康管理を如何に向上させるかが、健康中国2030や14次5か年計画で掲げた目標を実現できるか否かのキーになると考えられる。
以上
この記事は各種公開情報・ibg経験等を基に、ibgが内容を作成したものです。