はじめに

2021年6月4日、国務院より《公立医院高品質発展推進に関する意見書》が発表された。
新たなステージに入った公立医療機関改革の拠り所になるもので、健康中国構想の推進や、増え続ける生活ニーズへ対応する上で重要な役割を担うと言える。
公立医院の重点任務として、本《意見書》には以下6つが示されている。
1.新システムの構築
2.イノベーション
3.内部管理レベルの強化
4.新たな活力の構築
5.文化・価値観の形成
6.党による全面的な指導
本文を簡単にまとめたので、参考いただければと思う。
6つの重点任務
1.新システムの構築
・国家医学センターおよび区域医療センターの建設により、国家医学の進歩を促進し、全国の医療水準向上に繋げる。
・省級区域医療センターを建設して弱点を無くすことにより、省域診療能力の向上に繋げる。
・緊密型の都市医療集団や県域医共体の発展により、オンラインを活用した一体型管理を目指す。予防・治療・リハビリ・健康促進といった継続的なサービスを提供することで、治療中心から健康中心の形へ変換し分級診療を促進する。
・健全な分級分層分流疫病対策システムを構築する。
2.イノベーション
・臨床における重大疾病治療のニーズに基づき、癌・心脳血管・呼吸といった専門科の発展に重点を置く。
・生命科学・生物医薬科学技術といった最先端分野における基礎臨床研究を強化し、ポイントとなる技術の発展や技術の転用を促進する。
・最新技術を医療サービスに取り込み、遠隔医療やオンライン診療の更なる発展やスマート医院の建設を目指す。
3.内部管理レベルの強化
・経済管理に重点がおかれた科学化・規範化・精密化された管理システムを構築し、病院としての機能を適切に戻すことで、効率アップや費用削減に繋げる。
・予算管理の強化、内部管理制度の改善、資源配置や使用効率の向上。
・公益性向上のため、評価システムの改善や医療品質・運用効率・継続的な発展・患者満足度の向上を目指す。
4.新たな活力の構築
・合理的な公立医院の人員編成基準を策定し、動態調整システムを構築する。
・職責や知識に見合った報酬体系を構築し、立場に応じた職責や報酬を定める。職責と報酬を適正化する。
・医療従事者の教育評価制度を健全化する。
・秩序のある医療サービス価格の動態調整システムを構築し、医療収入における医療サービス収入の割合を増やす。
・緊密型医療連合体に対しては総額支払の検討を行い、残金の保留や超過負担への補填ができるようにする。審査強化も行う。
・政府指定地域の衛生計画に合致した公立病院へ、規定に基づき資金を投入する。
5.文化・価値観の形成
・疫病対策意識や職業精神を奮い立たせ、医療従事者の強い責任感、市民への熱意、技術向上への探求心を奮起させる。
・患者ニーズへ対応するため、医療サービスの継続的な改善を目指し、医者と患者の充分なコミュニケーションによる理解と信頼を深める。
・医療従事者への敬愛や若い医療従事者への育成教育により、医療従事者の権益を守り安全を確保する。
6.党による全面的な指導
・党委員会による全面的な指導の下、方向性の決定や全体の管理、政策決定、改革推進、実施といった全段階の運用を行う。
さいごに

上記スライドは、2021年3月11日に全人代で承認された第14次5か年計画の第13篇の内容を整理したものだ。
中国語のままで恐縮だが、今回紹介した《意見書》はこの5か年計画に基づく内容であり、計画実行に向けて着実に動き出したと言える。
本日掲載されていた丁香園による調査(全国190軒の医院を調査)だと、2020年医療機関従事者の平均年収は約19.7万元だった。 5年前に丁香園が行った調査(全国3万人に調査)では2015年は約7.7万元だったので、単純比較はできないが、報酬制度改革1つを見ても、確実に変化していることが分かる。

公立医院の軒数は減少傾向にあるが、今回の《意見書》を見ると、公立医院を中心とした地域医療体制を構築するという方針は今後も変わらないと考えられる。
以上
この記事は各種公開情報・ibg経験等を基に、ibgが内容を作成したものです。