はじめに
VBPやNRDL談判/競争入札といった薬価抑制政策が打ち出される中、“量”を伸ばそうと、国家基本医薬品リスト(EDL:EssentialDrug List)に対する関心も高まっている。
EDLとNRDLは混同されやすいが、基本的にはNRDL甲類(100%償還)に属する品目がEDLにも収載されやすいと言える。2018年にNRDL乙類から甲類へ変更し、またEDLへも収載された品目を持つ製薬メーカーの方もいらっしゃると思う。
またこれは噂レベルの話となるが、2020年5月に、2020年度中にEDLの調整が実施されるという話題が中国のメディアで流れた。その後は話が挙がっておらず、これについては引続き継続ウォッチしていきたい。
今回、基本医薬品リスト(EDL)について取り上げたい。
三級医院での基本医薬品使用状況
2020年7月1日、国家衛生健康委員会から《2018年度全国三級公立医院成績審査に対する国家監視測定分析状況の通達》が発表された。これは2018年の全国三級公立医院のデータに基づき、26の成績審査監視測定指標に対して、国家衛生健康委員会と関連部門が共同で分析を行ったものである。
本《通達》に掲載されている、三級医院での基本医薬品の使用状況を紹介する。
・外来患者の基本医薬品処方割合は52.25%(総処方数における基本医薬品の処方割合)
・入院患者の基本医薬品使用率は95.38%(全入院患者における基本医薬品の使用患者割合)
上記データだが、外来患者については基本医薬品の処方割合であり、処方薬の中に基本医薬品が含まれていればカウントされる。
また入院患者については、基本医薬品の使用率であり、一度でも基本医薬品を使用した患者は全てカウントされる。
986政策の発表
2019年10月11日、国務院から《不足医薬品の安定供給強化に関する意見》(国办发[2019]47号)が発表された。医薬品使用の監督管理および審査を強化し、また医療機関に対する使用医薬品リストや処方最適化指導などを通じて、基本医薬品の使用比率を上昇させるというものだ。
目標値としては、基層医療衛生機関・二級公立医院・三級公立医院に対する基本医薬品品目数量割り当て比率を、原則的に90%・80%・60%を下回らないようにする旨が示されている。
上記スライドの左側【現状】は、基本医薬品の販売額における割合(金額ベース)を纏めたものだ。【今後の目標】は金額ベースではないので、左右を単純比較できないことはご注意いただきたい。
この“基本医薬品986条件”に関してだが、その後言及されている文書は無い。
2019年12月20日国家衛生健康委員会より発表された《国家衛生健康委办公厅 医療機関の合理的な医薬品使用審査業務に関する通知》の中で、三級・二級公立医院の成績審査“合理的な医薬品使用”部分について記載されたのみである。
基本医薬品制度に関して、2009年国基307、520/685リストに始まり、現在までに各省で購買・割り当て・使用審査に関する指標が次々と発表されている。指標について多少の差はあるが、大体は基層・二級・三級の医療機関に対して、70%・45%・30%の購買・割り当て・使用を要求している。各省ともに、“986”の目標までには大きな差がある状況だ。
さいごに
基本医薬品986割り当て要求だが、短期間での実現は難しいと見られている。しかし、“基本医薬品の使用促進”という流れは変わらないと言える。
薬価抑制策の影響を受ける品目は、EDL収載やそれに応じたプロモーション戦略策定などが、今後とりうる選択肢として挙げられる。
EDLへの収載方法は明確ではなく、NRDL甲類への収載を目指すのがよいと考えられる。
NRDL甲類医薬品だが「臨床治療上必須で、広範に使用されており、治療効果が適切で、同種同効の医薬品の中で価格が低い医薬品」と、2020年7月31日に医療保障局より発表された《基本医療保険償還医薬品管理暫定弁法》にて定義されている。詳細は、《基本医療保険償還医薬品管理暫定弁法》(NRDL管理暫定弁法)を参照いただきたい。
日本では在宅勤務が続いていると聞いています。日本・中国へいらっしゃる様々な方々に、本ニュースが少しでもお役に立てれば幸いです。
以上
この記事は各種公開情報等を基に、ibgが内容を作成したものです。