はじめに
2020年7月23日、国務院より《医薬衛生体制改革2020年下半期重点任務の通知》が発表された。
この文書には、26項目に及ぶ2020年下半期の医薬衛生体制に対する改革内容が列挙されている。今回は、こちらの内容を簡単に紹介したい。
2020年下半期重点任務
本文書に盛り込まれている項目を列挙してみた。
結論を言うと、これまで行われていたことが継続されるということだが、幅広い内容が含まれており、全体を把握する上では参考になると思うため紹介したい。
医薬衛生体制改革2020年下半期重点任務
【公共衛生体系の強化】
1.疾病予防コントロールシステムの改善
2.伝染病監視測定警報システムの改善
3.公共衛生応急物資保障システムの整備
4.秋冬期新型コロナウイルスの対応
5.公共衛生部隊の強化
【健康中国へ向けたアクション促進】
6.生産・生活環境改善の継続、健康文明生活様式の提唱
7.重点対象市民への健康促進を強化
8.慢性疾病予防治療レベルの向上
9.伝染病・地方病・職業病等の予防治療レベルを向上
【公立医院の総合改革】
10.医療衛生組織・医療従事者に対する健全な評価システムを整備
11.医療サービス価格の動態調整システムを構築・改善
12.報酬制度・管理体系の強化
13.対象区域の公立医院に対する、政府からの財務面・コンプライアンス面からの監督強化
【医療保障制度改革】
14.基本医療保障レベルの向上
15.医療保険診療報酬支払方法の改革、DRGsの推進
16.医療保険基金管理の強化、監督管理システムの整備
17.商業健康保険/民間保険の早期発展
【医薬品供給保障システムの健全化】
18.医薬品・消耗品購買政策の改善
19.科学的・合理的な医薬品の使用を推進
20.医薬品・消耗品の使用状況監督管理を強化
21.不足医薬品安定的な薬価・安定的な供給を実施
【関連重点改革の推進】
22.地域医療センター建設の継続的な推進
23.分級診療および医薬衛生データ化の推進
24.中医薬/漢方薬の振興発展を推進
25.貧困層に対する健康・自立の支援
26.医療衛生業界に対する総合的な監督管理・査察システムの改善
新型コロナウイルス対策だけでなく、今後起こりうる新たな伝染病へ対応すべく、【公共衛生体系の強化】が最初に取り上げられている。
その後は、健康中国2030の数値目標達成へ向けた【健康中国へ向けたアクション促進】。
そして、医療費抑制やコンプライアンス推進に関する施策が列挙されている状況だ。
以前の改革方針から変わった点
以下は、2016年12月に国務院から発表された《第13次5か年計画医薬衛生体制改革プランの通知》を1枚ものに纏めたものだ。(ibg2017年作成)
今回発表された《2020年下半期重点任務の通知》と分類上は大きな変化はないが、分級診療制度に関する扱いが下がってきているのが見て取れる。
“看病难(診察を受けるのが難しい)”を解決するべく掲げられてきた、患者医療アクセスの向上へ向けた様々な施策としては、以下のようなものが挙げられる。
・分級診療の推進、医療連合体の形成
・医師の複数医療機関での兼業を認可
・医師不足解消へ向けた各種の医師/医大生激励制度
・オンライン処方・オンライン薬局といったデジタル医療の促進
分級診療については未だ課題が残っているようだが、その他はある程度の成果が見られたということかも知れない。
さいごに
VBP・NRDL・MAH・新薬上市優先制度などが、製薬企業にとって最近話題に挙がりやすいテーマだ。皆さんが関心の高いテーマに加えて、我々の顧客でもある医療機関や患者さんに関する話題(公立医院の改革、公共衛生体系の強化など)についても、引続き本ibg Healthcare Newsで紹介していきたいと思います。
以上
この記事は各種公開情報等を基に、ibgが内容を作成したものです。