はじめに
2022年1月30日、9の政府関連部署(※)より《"十四五"医薬工業発展計画》が発表された。
(※)工業和信息化部、国家発展改革委員会、科学技術部、商務部、国家衛生健康委員会、国家薬品監督管理局、応急管理部、国家医療保障局、国家中医薬管理局
太字の3部門は、"十三五"に参加しておらず、今回から計画策定に追加された部署だ。
全27ページある内容を、以下の構成にまとめてみた。
・解決すべき課題
・今回の設定目標
・主要内容Ⅰ:製品イノベーション・産業化技術突破の加速
・主要内容Ⅱ:産業チェーンによる安定性・競争力の向上
・主要内容Ⅲ:供給・保障能力の強化
・主要内容Ⅳ:医薬製造能力アップグレードの推進
・主要内容Ⅴ:国際競合における優位性の創出
・主要内容Ⅵ:諸施策の実行を保障
ボリュームの多いもので恐縮だが、先ずは整理したスライドを掲載する。
今回の発表内容(ibg整理)
ポイントを3点抽出
あくまで私の感覚で抽出したものであるが、3点ほどポイントを紹介したい。
【国を挙げた産業の育成・発展】
・VBPなどを進めることで、国内製薬メーカーを「新薬研究開発型企業」へ転換させる計画が節々に明記されている。それによって、国内メーカーの開発力・売上シェアを向上させるというのが、政府の意図するところだろう。
・当然ながら、品質レベルの向上は引続き掲げられている。また「DX活用」・「新ビジネスモデルの構築」といったキーワードも、国内産業の育成には不可欠なものと謳われている。
・さらには、国内市場だけでなく、「一帯一路」地域を含む海外市場への進出・開拓も、今回発表された計画には明記されている。
【産業チェーンによる安定性・競争力の向上】
・「産業チェーン」とは、Value ChainやSupply Chainより上位の概念で、各社それぞれの強みを連携しながら新たな価値を形成するというものだ。「研究・開発・生産・物流・販売」といった切り口だけでなく、「企業・大学・医療機関の連携」、「異なる業界間での連携」といった考え方が含まれるものだと私は理解している。
・今回発表された《医薬工業発展計画》では、産業チェーン配置の最適化として「京津冀(北京天津河北)、粤港澳(広東香港マカオ)、長三角地域における国家重大戦略を実施」も明記
されている。つまり、これらのエリアを単位とした様々な切り口の連携をしていくことで、競争力を高めていこうという計画になっている。
【外資系企業に対する期待】
・「中国を含むグローバル同時開発・上市」や「中国でのR&Dセンター設立」といった内容が、外資系企業に対する期待として明記されている。今回の《計画》は国内産業の発展を目指したものであるため、このような記載となっているのだろう。
・また2018年5月に121種が発表されて以降更新されていない「希少疾患リスト」についても、今後動態調整を行うことが明記されている。更新されると言われながら既に3年以上経った「希少疾患リスト」。中国政府の希少疾患に対する今後の対応も注視したい点だ。
・残念ながら今回の《計画》に、OTC薬に関する記載はなかった。公的医療費抑制に向けて様々なOTC薬を増やす手段も考えられると個人的には思うが、それについては引続き動向を見守りたい。
さいごに
以下は、《"十四五"医薬工業発展計画》内の「発展目標-グローバル発展」から抜粋したものだ。
【以下、抜粋文章】
2035年を展望しつつ、我が国の医薬工業力の全体的な向上を実現させる。
イノベーションを通じた全面的な発展。Me-too薬・First-in-class薬の増加。世界的な医薬イノベーションの源泉となる。
産業競争上の優位性を持ち、産業構造をグレードアップさせ、グローバル医薬産業における重要な地位を占める。
多品種・高品質な製品を持ち、より高レベルに人民の健康ニーズを満たし、健康中国建設へ向けた保障体制を堅持する。
本ibg Healthcare Newsでも紹介してきた通り、中国の国内新薬メーカーも台頭してきている。百済神州(BeiGene)や再鼎医薬(ZaiLab)など、赤字は続くが研究・開発に多額の投資をする企業は代表的な企業だろう。
個人的な感想だが、今回の《"十四五"医薬工業発展計画》は非常に自信にみなぎっているような印象を受けた。自国のヘルスケア産業の育成・発展に向けて「力強さ」が求められるの
で致し方ないかも知れない。
引続き、5か年計画の推進状況をウォッチしていきたい。
【参考スライド】
以上
この記事は各種公開情報・ibg経験等を基に、ibgが内容を作成したものです。