はじめに
2022年1月29日、国家衛生健康委員会より《医療機関設置計画への指導原則(2021-2025年)(中文:关于印发医疗机构设置规划指导原则(2021-2025年))》が発表された。
全国民に対して公平かつアクセシビリティの高い医療サービスを提供できるよう、国家衛生健康委員会が、各地域の医療機関をまとめる地方衛生健康委員会に対して出した《指導原則》という位置づけだ。
上記スライドは、今回発表された各指標に対する「2020年(現状)」と「2025年(目標)」をまとめたものだ。属性にある「予測性」とは「おそらくこれくらい行くだろう」というもの、「指導性」とは「難しいかも知れないが頑張って達成して欲しい」という意味だと考えられる。
本《指導原則》に掲載されている内容をいくつかピックアップしたので紹介する。
分級診療の加速、リハビリ・介護施設への転換
上記スライドは以前から本ibg Healthcare Newsで紹介している、分級診療モデルを整理したものだ。
今回の《指導原則》においても、「医連体(医療連合体、都市部における医療連携)」や「医共体(医療共同体、農村部における医療連携)」が謳われている。
また2021年11月22日に国家衛生健康委員会から出された《高齢者医療介護サービスパイロット業務の展開に関する通知》にも記載されていた「二級以下医院の介護院への転換」が、今回の《指導原則》にも掲載されている。
具体的に言うと今回の《指導原則》では、医療資源の豊富な地域において、接続性医療機関(=リハビリ医院、介護院、介護ステーション)へ転換することが激励されている。
二級・一級医院には民営医院も多い。この辺の動きも引続きウォッチしていきたい。
国家的な医学レベル向上へ向けた体制構築
国として医学レベルを向上すべく、現行リソースの分配計画を以下に委託することが、今回の《指導原則》に掲載されている。
・国家医学中心
・国家・省級区域医療中心
・臨床医学研究中心
・中医薬伝承創新中心
優秀な人材を上記の各センターへ配置。これらの高レベルセンター・医療機関が、技術面・人材面で他の医療機関を支援しながら、死亡率の高い疾病に対する治療などを支援していく予定だ。またこれらのセンターが中心となって、AI・ビックデータ・クラウド・5Gといっ
た技術も融合させたスマート医療・遠隔医療の標準化も推進することが謳われている。
合理的な公立医院の数
【省級区域医療中心】
・人口1,000~1,500万人に対して、1軒の省級区域医療中心を設置
・ニーズに応じて、児童・腫瘍・精神・伝染病などの専門医院、及び中医医院を設置
【三級総合医院】
・人口100~200万人に対して、1~2軒の市レベル三級総合医院を設置
・ニーズに応じて、児童・精神・産婦人・腫瘍・伝染病・リハビリなどの専門医院(中医分類の専門医院含む)を設置
【県レベル総合医院・中医分類医院】
・1つの県エリアに対して、原則1軒の県レベル総合医院と中医分類医院(中医医院、中西医結合医院、少数民族医医院等)を設置
・人口100万人を超える地域は、県レベル医院軒数を適切に増やす
合理的な公立医院のベッド数
【新たに設置された医療機関でのベッド数】
・県レベル総合医院:600~1,000床
・市レベル総合医院:1,000~1,500床
・省レベル以上の総合医院:1,500~3,000床
【三級総合医院のベッド数】
・重傷病専用のベッド数及びその割合や、各臨床科室へのリソース分配状況を、三級総合医院に対して指導する
・病床使用率や平均入院日数等も、三級総合医院に対する指導項目とする
中医領域の発展
【国家レベル】
以下の各センターの建設を推進
・国家中医医学中心
・国家中医区域医療中心
・国家中西医結合医学中心
・国家中西医結合区域医療中心
【省レベル】
・各省に少なくとも1軒の省級中医区域医療中心を設置
・中医の特色ある重点医院、中西医共同の旗艦医院の発展
【県レベル】
・県レベル中医医院、中医診療所/問診部の発展
【その他】
・中医医院における、感染性疾病科・呼吸科・急診科・重症医学科などの科室設備を構築
・中医医院における緊急治療レベルの向上
さいごに
今回紹介した《医療機関設置計画への指導原則(2021-2025年)》。
結局のところ、以下のようにまとめられる。
【目的】
・国家的な先進医療レベルの向上
・地域間医療格差の解消
・高齢化への対応
【手段】
・国家レベル・省級レベルの医療センター・研究センターの設置
・役割・規模の明確化(等級医院と基層医療衛生機構、都市と地方)
・治療~リハビリ・介護の体制/仕組み構築
以上
この記事は各種公開情報・ibg経験等を基に、ibgが内容を作成したものです。