はじめに
2021年9月29日に国務院より発表された《“十四五”全民医療保障計画の通知》では、全国統一の「長期介護保険制度構築」について提起された。
過去3回(十一五~十三五)の医療衛生関連5か年計画と言えば、「国民皆保険」や「医療費抑制」といったテーマばかりだったのが、今回初めて高齢化対応方針が明記された訳である。
中国の被用者保険(狭義の社会保険)には、五険(養老保険・医療保険・失業保険・工傷保険・生育保険)が運用されている。
今回紹介する長期介護保険だが、2016年からパイロット都市で施行されているものだ。
長期介護保険制度パイロット政策
長期介護保険制度のパイロット政策だが、全国的なものだとこれまで2回発表されている。
【2016年6月発表の都市】
・吉林省長春市、黒龍江省チチハル市、上海市といった15の都市
・吉林省・山東省(国家パイロット重点省)
【2020年9月発表の都市】
・北京市石景山区、天津市、山西省晋城市といった14の都市
2020年9月《長期介護保険制度パイロット拠点の拡大に関する指導意見》にて追加されたパイロット都市である北京市石景山区と、独自にルールを策定・施行する深圳市について、パイロット施行状況をまとめてみた。
共通して言えることは、現行の公的医療保険制度を活用して財源を賄っている点だ。(一部は地方政府財政を使用)
介護・医療・看護等のサービスを総合的に提供する施設が多いというのもあるが、「医養結合」という政府方針がここでも体現されている。
参考として、公的医療保険制度についてのスライドを以下に添付する。
高齢者介護に関する調査結果
上記は、失能(身体または精神機能の一部または全部が失われて日常生活に支障を来たす状態)に関する調査結果より抜粋した内容だ。
高齢に伴い失能度合いは高まり、また一人暮らし者の方が高いという結果が出ている。
同レポートに、長期介護に関する成人・高齢者の考え方も掲載されていたので紹介する。
様々な記事が出ている通り、2020年に65歳以上の占める割合が13.5%に達して高齢化社会となった中国は、今後、高齢社会→超高齢社会へ進むと言われている。
上記レポートだと、約1/3の成人が在宅介護に対して前向きな回答となっているが、限られた成人で多くの高齢者を支える将来、経済面や精神面などの様々な問題が生じてくることだろう。
さいごに
私自身、日本の地元に住む親の介護を考え始めるようになったことと、国務院発表の《“十四五”全民医療保障計画の通知》で提起されていたという理由から、私の介護保険制度に対する関心が高まり、今回中国の状況を政策的な観点からまとめてみた。
今回紹介したとおり、中国では各地域・都市によって政策が異なる。また財源を公的医療保険としている点からも分かる通り、都市従業員基本医療保険の加入者が多い都市部では財政的な面で対応をとりやすいが、地方だとそうはいかないと考えられる。
《“十四五”全民医療保障計画の通知》の「第9条.長期介護保険制度の構築」には、以下が記載されている。
『全国統一の長期介護保険失能等級評価基準を制定し、長期介護保険の認定・等級評価といった標準体系・弁法を構築し、長期介護保険の基本保障項目を明確にする。』
原稿の社会保険の仕組みの中で、どのようにして全国統一の長期介護保険制度を構築していくのか、引続き注視していきたい。
以上
この記事は各種公開情報・ibg経験等を基に、ibgが内容を作成したものです。