はじめに
“希少疾病薬のNRDL収載時期を早期化して欲しい”という建議に対する国家医療保障局からの回答が、2020年9月16日に発表された。
【主な発表内容】
・121種類ある希少疾患のうち、現在中国で上市&適応症承認されているのは約50品目。そのうち約40品目はNRDLへ収載されている。
・2020年度版のNRDLリストを現在調整中。リストの動態調整化・収載医薬品構成の改善・医療保険資金の有効活用化・国民の医療費負担軽減を実現すべく、引続き医療保障局は努力していく。
今回はオーファン薬を取り上げていく。
オーファン薬の状況
上記は、2018年5月22日に中国政府から発表された《第一次希少疾病リスト(121種類)》を基に、治療薬の上市状況や、中国NRDL収載状況を纏めたものだ。
【上記から言えること】
・中国政府発表の希少疾病リスト121種類のうち、まだそれらのメディカルニーズは充分に満たされていない。(上記“希少疾病数”の列より)
・中国で上市且つ適応症ある医薬品は55品目。そのうち38品目はNRDLへ収載済み(約69%)(上記“治療薬物数”の列より)
【上記だけでは分からないこと】
もちろん上記だけでは分からない情報もある。
現在NRDL収載されている38品目の大部分は、生命危機に関連したり、治療後のQOLを高めるためのものであったりする。《第一次希少疾病リスト》に関する治療薬だからと言って、簡単にNRDLへ収載されるとは現時点で言えない。
希少疾病に関する政策
中国では2000万人の希少疾病患者がいると言われているが、2017年までは“希少疾病の定義”が明確にされていなかった。
2018年5月に《第一次希少疾病リスト》が発表されて、やっと明確化されたと言える。
2018年11月には国家薬品監督管理局・国家衛生健康委員会より《臨床緊急ニーズのある海外上市済み医薬品リスト》が発表された。48品目中、希少疾病薬は20品目含まれていた。中国政府が希少疾病薬の積極的な受け入れ態度を示した、はじめての発表と言える。
2019年2月には、李克強総理が国務院常務会議上で、2000万人の希少疾疾病患者に対する医薬品供給、及び増値税優遇の指示を示した。
同月の2019年2月に《希少疾病診療ガイドライン(2019年版)》が発表され、2018年5月の《第一次希少疾病リスト》121品目に対する詳細定義、病因・臨床対応・検査・診断・治療に関する指南が提示された。
同じく2019年2月には、《第一次希少疾病診療ネットワーク病院リスト》が国家衛生健康委員会より発表された。全国324軒の病院が本リストへ収載された。
【324軒の内訳】
・全国レベルのリーダー病院:1軒
・各省市のリーダー病院:32軒
・各省市のメンバー病院:291軒
また2020年5月の全人代では、121種類希少疾病に該当する治療薬を、NRDLまたはNEDLへ収載、或いは省レベル医療保険償還でカバーする旨が提案されている。
中国医療レベルを向上させるべく、海外オーファン薬の中国上市を支援する政策が、特にここ2年間出ている状況だ。
さいごに
「海外では希少疾病だが、人口の多い中国では希少疾病ではない」
こちらで作成したPatientFlowを基に、日本の方々と中国での市場規模を検討する際、こんな話を冗談で聞いたりする。
希少疾病に関する市場環境だが、上述したように、中国は中国の独自な状況がある。
特に政策面は2018年と2年前から出始めたばかりであり、NRDL・NEDL・確定診断可能な推薦病院リスト・医師診断力の向上など、希少疾病に関する環境変化は今後もありうるだろう。
制度も市場環境も高速に変化する中国の最新情報を、いち早くキャッチし纏めながら、それらの活用方法(案)を引続き作成していきたい。
以上
この記事は各種公開情報・ibg経験等を基に、ibgが内容を作成したものです。