2022年11月29日、国家薬品監督管理局より《医薬品MAHが品質主体責任を果たすための監督管理規定(パブコメ)》が発表された。
品質管理に関するMAHへの要求は、薬品管理法などでこれまでも示されてきた。今回の発表は、MAHへの要求が更に具体化されたものである。
今回のパブコメ内容を紹介する前に、MAHが初めて提起された2019年8月発表の《薬品管理法(改訂版)》を振り返りたい。3年以上前に発表された内容だが、MAHを語る上で避けられない法規である。
上記は、「薬品管理法(改訂版)のアジェンダ」と「以前からの変更点」を1枚ものにまとめたスライドだ。MAHに関して記載されている第三章と第七章の内容を見ていこう。
第三章(第30条~第40条)の日文概略から、MAHに関するポイントを抜粋した。
ご存じの通り、MAHの役割は大きく以下の2つに分けられる。
- 医薬品の品質管理(RA:Regulatory Affairs、QA:Quality Assurance、PV:Pharmacovigilance)
- 適切なプロモーション管理(詳細は2020年12月1日施行の医薬代表登録管理弁法(試行)を参照)
また海外MAHに対する中国国内でのMAH代理人指定について書かれているが、2020年8月3日発表の《国外薬品上市許可所持者国内代理者管理暫定規定(パブコメ)》は、未だ施行されていない状況だ。
第七章(第77条~第83条)にもMAHに関して明記されている。
詳細説明は省くが、《薬品管理法(改訂版)》が発表されて以降、PV機能を強化した企業は少なくないだろう。
前置きが長くなってしまった。
今回発表された《医薬品MAHが品質主体責任を果たすための監督管理規定(パブコメ)》で明記された、MAHに対する要求事項を紹介したい。(私の簡易翻訳であることを了承ください)
【第4条.担当部署・職責の明確化】
- MAHは、研究開発・生産・品質管理・販売管理・安全性管理・上市後研究開発といった部署の職責を明確にし、またそれが関連する品質管理規定の要求に合致することを担保すること
- 品質管理については独立部署として設置すること。また彼らは品質管理に関わる全て
の活動へ参加し、医薬品の生産経営品質管理に関わる文書の確認作業に責任を持つこと
【第5条.Key Personに関する要求】
- MAHは、企業責任者・生産管理責任者・品質管理責任者といったKey Personを配置すること。これらの方々は企業の正社員であり、また関連する品質管理規定の要求を満たすこと
【第6条.企業責任者の職責に関する要求】
- 企業責任者は、全面的な日常管理を担い、全プロセスにおける品質管理を担保する役割である。専門の品質管理責任者を配置し、必要なリソースを提供しながら、品質管理部署が職責を全うできるよう保証すること 等
- 企業責任者は大学(本科)卒業以上の学歴を持ち、医薬品に関する専門領域の業務経験があり、また医薬品の監督管理に関する関連法規を理解していること
【第11条.生産管理に関する要求】
- MAHは、生産全プロセスの品質管理をカバーする仕組みを構築すること。国家薬品基準に基づき、政府薬品監督管理部門の審査を受けつつ、関連する生産品質管理規定の要求を満たすことを確保すること
【第16条.委託生産管理に関する要求】
- 医薬品の生産を委託する場合、MAHは委託先の品質保証能力やリスク管理能力を評価すること。また規定に基づき、委託先と品質管理・生産委託に関する協議(契約)を締結すること(原材料供給メーカーの審査、変更管理、年度報告など)
- またMAHは委託先が協議(契約)に基づいて品質管理しているかどうかを、定期的に現場で確認すること
【第23条.医薬品安全性事件に関する要求】
- MAHは、医薬品の安全性に関する事件が生じた際の対応案を策定し、関係者に対してそれを説明・研修したり、またシミュレーション準備を行ったりしておくこと
- 医薬品の安全性に関する事件が生じた際、MAHは即座に関連する医薬品・原材料・包材、関連する生産ラインに対して適切な処置を行い、被害拡大を防ぐこと
【第28条.年度報告体制】
- 企業責任者は、年度報告に責任を持つ専門部署or担当者を指定し、年度報告内容の真実性・正確性・完全性・トレーサビリティ可能であること等を確保すること
- 国家薬品監督管理局指定の年度報告テンプレートを基に作成し、企業法定代表人or企業責任者が承認した後、所在する省級薬品監督管理部門へ年度報告を提出すること
全35条ある中から、いくつかをピックアップして紹介した。
GMP(薬品生産品質管理規範)といった他政策との整合性について私は確認できていないが、同じ国家薬品監督管理局から出されているので問題ないことだろう。
また今回紹介した2022年11月29日発表の《医薬品MAHが品質主体責任を果たすための監督管理規定(パブコメ)》だが、前述した未だ施行されていない2020年8月3日発表の《国外薬品上市許可所持者国内代理者管理暫定規定(パブコメ)》と、内容が重複している部分もある。施行された政策を“正”としつつ、対応していくのが望ましいだろう。
中国で医薬品を販売している日系製薬メーカーにとって、今回の発表内容を基に大きく見直すことはないと想像される。ただMAHに関する規定が今後も発表されると考えられるので、引続きこういった情報も共有していきたいと思う。
以上
この記事は各種公開情報・ibg経験等を基に、ibgが内容を作成したものです。