はじめに
弊社が購入しているデータベースより、AstraZeneca中国の業績情報をまとめてみた。
【左側:売上推移】
・2020年は中国医薬品市場全体と同様、AZ中国の売上も前年比割れ
・売上における医院比率は年々減少
【右側:領域別の医院チャネル業績】
・VBPの影響を受けて、2020年は消化・呼吸・心血管といった領域の売上が大幅減
・新製品の貢献もあり、腫瘤・泌尿領域の売上は増加
AZ中国だが、プロモーション組織は現状以下のような形で構成されている。
・核心医院:5つのBD(それぞれにSales・Marketing等を配置)
・その他チャネル:県域チーム、全国社区チーム、薬局チーム、デジタルチーム
上記で挙げた消化・呼吸・心血管といったVBPによる影響を、「その他チャネル」でカバーしている状況だ。
AZ中国だが、先日したプロモーション組織とは別の形で、「数字化及商業創新(デジタル化及びビジネスイノベーション)」というチームが存在する。
以下は、このチームが8つの都市で推進している取り組みを紹介したパンフレットだ。(先日参加した学会で受領)
政府・産業・学術機関・研究機関・製薬企業・投資会社が連携しながらエコシステムを発展。
イノベーティブな医療サービスモデルや、健康管理~検査~診断~治療~介護までの全プロセスをマネージメントするソリューションを提供しようというものだ。
無錫市での取り組みの1つを紹介しよう。
【肺がん検査Car 公益活動】
(目的)
・早期検査・早期診断・早期治療の重要性を普及。
(検査プロセス)
1.社内で初期診断、AI分析
2.リスクの高い場合、社内でCT検査
3.CT画像が5G通信を通じて肺がん診療センターへ送信
4.CT画像送信から1分以内に、センターの医師チームから治療案が連絡
ちなみにAZ中国の発表だと、2021年末までに1万人以上の郷鎮地域住民へこのサービスを提供する予定だ。
地方政府(上記例は無錫市)と連携しつつ、異業種(上記例は医療機器・医療機関・通信)も巻き込みながら、郷鎮・県域の潜在患者を掘り起こそうというAZ中国の思惑が見て取れる。
患者中心へ向けた取り組み
“以患者为中心(患者中心)”は、数年前から中国医療業界で非常によく聞く言葉だ。
AZ中国の数字化及商業創新チームによる取り組みも、患者中心の考えに基づくものと言える。
「年間売上が300億元以上もあるMNCだから、このような取り組みをできるのでは?」
このような質問をされる方もいらっしゃると思う。
しかし、異業種と連携したエコシステム構築に、「健康管理~検査~診断~治療~介護」の視点で取り組んでいる事例は大手MNC以外でも多く発表されている。
VBP、GPO、NRDL新ルール対応といったトピックだけでなく、将来を見据えたイノベーティブな取り組みについてもこれまで以上に交流させてもらいたい。
以上
この記事は各種公開情報・ibg経験等を基に、ibgが内容を作成したものです。