はじめに
2022年5月11日、国家薬品監督管理局(NMPA)より《医薬品監督管理ネットワークセキュリティ及び情報化の構築“十四五”計画》が発表された。
タイトルを見ただけだと、以下のような疑問が生じる。
・医薬品のトレーサビリティに関する5か年計画か?
・オンライン上の医薬品販売に関する規制も含まれるのか?
・臨床試験・上市申請・物流・販売など、医薬品に対するどのデータが対象となるのか?
【本5か年計画のアジェンダ】
1.現状認識(十三五の振り返り)
2.全体要求(十四五の目標など)
3.重点任務
4.任務遂行へ向けたサポート措置
情報化・現代化といった曖昧な表現の多い発表文書だが、「2.全体要求」と「3.重点任務」
から抜粋してまとめたものを今回紹介したい。
2025年末までの目標(2.全体要求より)
文章で記載されているものを私の理解で箇条書きにした。
・医薬品の監督管理を実現する健全なデジタル技術フレームを構築する
・政務に関するワンストップサービスの実現
・医薬品Life Cycleのデジタル管理を推進(品種情報の管理・安全使用情報の管理・ビッグデータ分析による監督管理レベルの向上)
・医薬品の健全なるトレーサビリティシステムの構築
・医療機器の識別コードと連動した医療・医療保険・医薬データの管理
・化粧品監督管理情報化との統合強化
・医薬品産業のデジタル化・スマート化への転換を推進
・民衆の医薬品安全使用に対する関心度・参画度の向上
いやはや、盛り沢山な内容だ。
上記目標を実現するための手段として、発表文書では以下3つが掲げられている。
【ビッグプラットフォームによる情報掌握】
⇒国家レベル・省レベルの医薬品監督管理プラットフォームの統合
【ビッグデータ分析による応用】
⇒異なる階層・異なる地域・異なる部門間の業務データ連携を行うことで、医薬品に関わるリスク管理予測モデルを構築する
【ビッグシステムによる全面運用】
⇒行政審査・監督検査・追跡管理・検査検測・政務サービス・応急管理・信用管理といった複数業務領域の情報を電子化することで、医薬品の安全管理だけでなく、“二品一械(医薬品・化粧品・医療機器)”に対するデジタル監督管理能力を向上させる
本5か年計画を通じて何をしたいのか、なんとなく分かったような気もする。
より具体的な計画が書かれていることを期待しつつ、「3.重点任務」を見ていきたい。
5つの重点任務(3.重点任務より)
重点任務では以下の5点が掲げられている。
【重点任務】
1.“二品一械(医薬品・化粧品・医療機器)”デジタル監督管理能力の向上
2.政務一体化サービス能力の向上
3.監督管理データの融合・活用の推進
4.医薬品スマート監督管理の土台を構築
5.ネットワークセキュリティ総合保障能力の整理
1つずつ簡単に見ていこう。
1.“二品一械(医薬品・化粧品・医療機器)”デジタル監督管理能力の向上
・医薬品の上市申請・生産許可・生産監督管理・行政処罰に関するデータを一元管理することで、上市後の安全性管理業務の効率を高める
・医療機器においても各種データの一元化を図るだけでなく、医療機器の識別コードと連動した医療・医療保険・医薬データの管理を実現する
・化粧品においても、登録備案や上市後監督管理に関する業務データの一元化・共有化を図る
・ワクチンを始めとする医薬品のトレーサビリティシステムを改善する
・医薬品・医療機器・化粧品の統一された副反応監測システムを構築する
・全国統一の検査員情報管理プラットフォームを構築する
・企業や大衆からの情報収集などを行うモバイルを活用したシステム構築を推進する
2.政務一体化サービス能力の向上
・政府関連ホームページにおけるサービス能力の強化
・デジタル化による政府関連手続きの簡素化
・デジタル化による監督管理体制の強化
3.監督管理データの融合・活用の推進
・医薬品に関する国家レベル・省レベルのプラットフォームを統合
・ビックデータ分析によるリスク管理予測モデルの構築
4.医薬品スマート監督管理の土台を構築
・他国とも積極的に交流しながら、医薬品Life Cycleの監督管理規範を改善する
・医薬品の監督管理データをクラウド上に一気通貫で管理する
5.ネットワークセキュリティ総合保障能力の整理
・《サイバーセキュリティ法》・《パスワード法》・《データセキュリティ法》といった法規に則った形で、データセキュリティ体制を構築する
総括
今回紹介した5か年計画《医薬品監督管理ネットワークセキュリティ及び情報化の構築“十四五”計画》、結局のところ何を言いたいのか、3つほどポイントを整理した。
【ポイント】
・医薬品の臨床試験~市販後の生産・使用データに至るまで、最新デジタル技術を使った全国規模の情報プラットフォームを2025年までに構築する
・医薬品だけに限らず、医療機器とも連動した医療・医療保険・医薬のデータ管理を目指す
・副反応情報等を民衆が見れるようなモバイルの仕組みも構築する
実現へ向けてどのようなデータシステム体系が設計されるのか? データソースはどこになるのか? 等々、今回の5か年計画では明らかにされていないが、今後の計画実行に向けて興味深く見ていきたい。
以上
この記事は各種公開情報・ibg経験等を基に、ibgが内容を作成したものです。