はじめに
2021年10月15日、国家衛生健康委員会老齢健康司より《2020年度国家老齢事業発展公報》が発表された。この中で、省別の人口高齢化状況、養老サービス供給状況、基本養老保険加入状況、長期介護保険(パイロット都市)状況といった、各種データが発表されている。
【省別の人口高齢化状況】
【基本養老保険加入状況】
【長期介護保険パイロット対応状況】
中国で高齢化が進んでいることは周知のとおりである。
今回は、国務院出された高齢化に対する今後の方針について紹介したい。
新時代老齢業務の強化に関する意見(国務院発表)
2021年11月24日、国務院より《新時代老齢業務の強化に関する意見》が発表された。
今回発表された内容は、第一編~第八編(その中に第1条~第24条)で構成された読み応えあるものだ。
簡単だが、第一編~第三編の内容をいくつかピックアップしてみた。
【一、全体要求】
(第2条:業務原則)
・「党の参画」、「全体視点でのプラン策定」、「医療・養老・健康など全体資源の統合」、「基本的な養老・衛生サービスの確保」などを、今後強化していく際の原則とする。
【二、健全な養老サービス体系】
(第3条:居家/社区養老サービスモデル創新)
・家庭での養老をベースとしつつ、新設・改造・リースなどの方法で社区の養老サービスレベルを高める。
・地方政府が責任者として、社区・家庭に対する専門機関によるサービス提供モデル構築を模索・推進する。
・街道社区が責任者として、飲食・衛生面のサービス専門機関を呼び寄せる。
・また社区組織が介護専門機関による訪問介護サービスの展開を呼び寄せる。
・党組織の1つである社区を活用しながら、“社区+物業(大家/不動産)+養老サービス”モデル構築を模索しつつ、家庭・社区養老サービスモデルを供給する。
(第5条:基本養老サービスリスト制度の構築)
・各地の財務状況に基づいた上で、基本養老サービスリストを作成する。
・そのリストを通じて、健康体・失能・経済困難といった様々な高齢者に対する、養老保障・生活支援・介護支援・社会救助などの適切なサービス提供内容を明確にする。
(第6条:養老保障体系の多階層化)
・養老保険のカバー範囲を拡大。出来る限り早急に、企業職員基本養老保険の全国カバーを実現する。
【三、高齢者健康維持体系の改善】
(第7条:高齢者向け健康サービス・管理レベルの向上)
・城郷地域における社区での高齢者向け健康知識教育の強化など。
・高齢者への重点慢性疾病の早期発見を強化。また高齢者への歯科健康・栄養改善・痴呆症防止といった活動の展開など。
・失能・重病・低収入といった高齢者に対するかかりつけ医サービスの、カバー率・サービスレベルを向上させる。
・2025年までに、二級以上の総合病院における老年医学科の設置率を60%以上にする。
(第8条:失能高齢者への長期介護サービス/保障を強化)
・国家基本公共衛生サービス項目に関する要求に従いながら、失能高齢者に対する健康評価・健康サービスを展開する。
・护理院、社区衛生服務中心、郷鎮衛生院といった医療衛生機関及びサービス提供能力を持つ養老サービス機関へ委託しながら、失能高齢者に対する長期介護サービスを提供する。
・長期介護保険制度パイロット政策を継続推進させながら、中国に適した長期介護保険制度構築を積極的に模索する。
(第9条:医療・養老の結合を深く推進)
・2025年末までに、全ての県(市、区、旗)で医療・養老が結合したサービス機関を少なくとも1軒整備する。
・失能高齢者の家族のうち、条件を満たした方は介護関連の職業技能研修へ参加し、また規定に従った形で職業研修補助金を受け取る。
さいごに
今回は国務院より発表された《新時代老齢業務の強化に関する意見》を一部紹介した。
「居家/社区養老サービス」・「長期介護保険制度パイロット政策」・「医養結合」等に関する今後の方向性が示されている興味深い内容だった。
また別の政策文書となるが、2021年11月22日に国家衛生健康委員会から《高齢者医療介護サービスパイロット業務の展開に関する通知》(中文:关于开展老年医疗护理服务试点工作的通知)が発表された。北京・天津・上海・浙江省といった15省で2022年1月~12月の一年間様々なパイロット任務を行い、2023年にはその経験を全国展開するといった内容だ。
こちらの《通知》については後日、本ibg Healthcare Newで紹介したい。
中国の社会保障から言うと、「基本養老保険」・「基本医療保険」・「長期介護保険(パイロット)」が“高齢化“と関連する内容だ。
引続き、政策動向・市場動向をウォッチしていきたい。
以上
この記事は各種公開情報・ibg経験等を基に、ibgが内容を作成したものです。