はじめに
2021年9月29日、国務院より《“十四五”全民医療保障計画の通知》が発表された。
今回発表された内容は、医薬品・医療機器・介護・医療費管理・医療サービスといった幅広い分野に影響のあるものだ。
今回国務院から発表された計画を実行すべく、今後は各関連部署から具体的な施策が発表される予定だ。
今回発表された《全民医療保障計画の通知》は、以下で構成されている。
1.発展基礎
2.全体要求(第1条~第3条)
3.健全なる多階層の医療保障制度体系(第4条~第9条)
4.医療保障管理体系の改善(第10条~第13条)
5.堅実な医療保障サービス体系の構築(第14条~第18条)
6.計画実行に向けて(第19条~第21条)
上記で示した目次の順番で本文を紹介すると、内容を理解しづらい。
今回私の方で、以下の分類に基づきポイントを抽出してみた。
【医薬】
A.集中購買
B.医療保険リスト収載品の評価
C.公立医療機関における購買価格の監督管理
D.重点区域における共同購入
E.イノベーション薬に対する評価の強化
【医療機器】
A.集中購買
B.医保医用消耗材に対する准入制度構築・リスト作成、医療保険償還基準設定の検討
C.公立医療機関における購買価格の監督管理
D.重点区域における共同購入
【介護】
【医療費】
A.医療保険基金の予算管理・監督管理の強化
B.DRG、DIPの推進
C.省跨ぎ医療費精算制度の改善
【その他】
A.医療保障サービスの向上
B.全国統一の医療保障情報管理プラットフォーム構築
今回の発表内容
【医薬】
A.集中購買
・公立医療機関において、集中購買を通じた医薬品購入額の割合(÷全ての医薬品購入額)を、約75%(2020年)から90%(2025年)に引き上げる。(漢方薬錠剤は含まず)
・集中帯量購買の品種数を、112種(2020年)から500種以上(2025年)に引き上げる。2025年の目標値である500種以上とは、国家レベル+省レベルの対象品目を合わせた品目数である。
B.医療保険リスト収載品の評価
・NRDL調整ルール・指標体系、及びリストの動態調整をより良いものにする。同時に、臨床ニーズや経済評価の高い医薬品がNRDL収載品となるような、健全なる評価体系を構築する。
C.公立医療機関における購買価格の監督管理
・公立医療機関における医薬品購買価格情報の監督管理体系を全面的に構築する。
・異常データの分析を行うことで事前の対応管理能力を向上させる。また医薬品価格の監督管理を常態化させ、全国の価格体系を管理する。
・公立医療機関をメインとするが、進捗状況に応じて他の医療機関やリテール薬局等へも展開していく。
D.重点地域における共同購入
・京津冀地域(北京市・天津市・河北省)における医薬品共同購入を支持する。
E.イノベーション薬に対する評価の強化
・イノベーション薬に対する安全性・有効性の情報収集を迅速に行うことで、それらに対する先進性・経済性の評価を強化する。
【医療機器】
A.集中購買
・公立医療機関において、集中購買を通じた高額医療用消耗材の購入額の割合(÷全ての高額医療用消耗材の購入額)を、80%(2025年)にする。
・高額医療用消耗材の集中帯量購買の品種(類)数を、1種(2020年)から5種以上(2025年)に引き上げる。2025年の目標値である5種以上とは、国家レベル+省レベルを合わせた数である。
B.医保医用消耗材に対する准入制度構築・リスト作成、医療保険償還基準設定の検討
・医療保険医療用消耗材に対する管理を強化する。具体的には、准入制度を構築したりリストを作成する。
・また医療保険医療用消耗材の合理的な使用を促進するために、償還基準の設定を検討する。
C.公立医療機関における購買価格の監督管理
・公立医療機関における医保医用消耗材の購買価格情報の監督管理体系を全面的に構築する。
・異常データの分析を行うことで事前の対応管理能力を向上させる。また.医保医用消耗材価格の監督管理を常態化させ、全国の価格体系を管理する。
・公立医療機関をメインとするが、進捗状況に応じて他の医療機関やリテール薬局等へも展開していく。
D.重点地域における共同購入
・京津冀地域(北京市・天津市・河北省)における医薬品共同購入を支持する。
【介護】
・疾病患者のニーズを満たすために公的医療保険制度をこれまで構築してきたが、高齢化社会を迎えるにあたり、本格的な長期介護保険制度の構築が求められている。相互扶助などの実現に向けて、介護保険制度に企業や個人が加入し、経済社会発展や保障レベルの維持を形成する体系を構築する。
・全国統一の長期介護保険・評価基準を制定し、基本保障項目を明確にする。また高齢者・失能高齢者・重度障碍者に対する統合的な保障政策を構築する。
・管理サービス体系を構築し、社会全体が介護保険関連サービスへ参入しやすい状況にする。また民間保険企業やディベロッパーによる長期介護保険商品を激励する。
【医療費】
A.医療保険基金の予算管理・監督管理の強化
・公的医療保険の収入について、今後の経済発展レベルに応じた収入額を目指す。
・公的医療保険の支出についても今後の経済発展に応じたものとしつつ、国民の基本医療ニーズに応じた形へ適切に対応していく。
・医療保険基金の使用状況について、デジタル・ビックデータ等を活用しながら全方位・全プロセスから監督管理していく。
B.DRG、DIPの推進
・DRG、DIPによって算出された入院費用の割合(÷入院費用全体)を、70%(2025年)にする。
C.省跨ぎの医療費精算制度の改善
・全国統一の省跨ぎ医療費直接精算体系を策定する。各省市を指導しながら、全国統一の関連制度・ルールを作成する。
・同時に、医療保険基金や情報の管理に対する職責も明確にし、安定的な運用体制を構築する。
【その他】
A.医療保障サービスの向上
・400の医療保障サービス窓口を、県級以上の地域へ建設。
・500の医療保障基層サービスモデル店を、郷鎮(街道)・村(社区)へ建設。人口分布・人口流動・経済発展レベルに応じた、医療保障サービスを提供する。
・500の医療保障定点医療機関モデル店を建設。精緻化管理を推進する。
・100のスマート医療保険管理サービス店を建設。デジタル化によるサービスレベル向上を目指す。
B.全国統一の医療保障情報管理プラットフォーム構築
・全国レベルで、医薬品・医療用消耗材・医療サービスの医療保険情報を把握できるよう、コード体系の標準化やデータ安全性向上等を推進する。
・またビックデータ分析等を通じて、よりよいサービス提供を目指す。
さいごに
上記スライドは、第10次~第13次までの医薬品衛生事業に関する五ヵ年計画の変遷をまとめたスライドだ。(上記スライドに第14次の内容をまだ追記していない)
今回の第14次を見ると、新たなテーマとして以下のようなものが挙げられる。
・集中購買に対する数値目標の明確化(医薬品・医保医用消耗材)
・全国統一の長期介護保険制度構築を提起
・地域間の医療保障サービスレベル格差解消に向けた対応
五ヵ年計画を用いて20年前からの変遷を見ると、高速に変化する中国医療環境を把握できる。
あくまでマクロ的な視点から見たものだが、こういった情報を使って今後の将来をどのように捉えていくか? 引続き、各業界の方々と意見交流していきたいと思う。
以上
この記事は各種公開情報・ibg経験等を基に、ibgが内容を作成したものです。